711日午前10時。MOVEフェスティバルに向けて、ロンドンのユーストン駅からマンチェスターへと出発。同じ車両には、マニックスのTシャツを着た親子と、Tフェス用のテントグッズを持ったカップルが乗っている。そして出発から約2時間半後、マンチェスター駅に到着。去年は工事中で何がなんだかわからなかった駅が、見事にリニューアルしている。とてもイギリスとは思えないほどの整然ぶり。しかしながら見渡してみると、やたらとグラム娘・ゴス娘が多いことに気づく。どうやら今夜もマニックスファンが大集結する模様。そんな彼女たちを横目に、まずはホテルへと向かう。

宿泊先は駅近くの
Thistle Hotel。路面電車Metroの駅があるPiccadilly Gardenの目の前だ。チェックインして荷物を置き、間もなく出発。言うまでもないが、マンチェスターは相変わらず寒いんだか暑いんだかよくわからない天気である。とりあえずメトロに乗ってOld Traffordへ移動する。到着後は、チケットを受け取るべくBox Officeへ。意外とすんなりもらえて一安心。

入場ゲート前にできた列は、会場を1周しそうな勢いで連なっている。最後尾に向かって歩いていけど、見えるのは濃いアイメイクに、ピンクの羽根をまとったマニックスファンばかりだ。しかし午後3時にゲートが開くと、急遽もう1箇所入り口が設けられ、あっさり入場することができた。

会場内の様子は去年とさほど変わらない。グッズ売り場に飾られていたパンフレット内のタイムテーブルを丸暗記し、スタジアム内に足を踏み入れる。混んでいるかと思いきや、結構空いている。まぁ確かに平日の昼間だし。とりあえず去年の客より明らかに若いが、やはりどこを見てもマニックスファンだらけ。小学生くらいの子マニックスや、ビール腹のオヤジマニックス(働いてないのか?)、いかにも不健康そうな顔色の悪いマニックスカップルなどが勢ぞろい。会場内には異様な雰囲気が漂っている。







 15.30 Kinesis

司会のラジオDJのあいさつと共に、MOVEフェスティバルが幕を開ける。トップバッターは、新人のKinesis。マンチェスター近くのBolton出身の彼らは、メンバーのうち2人がアジア人だ。EPを聴く限りでは、ダイナミックなギターロックと英国北部感ただよう哀愁メロディーが好印象だったのだが、生演奏はそうでもない。まだ新人とだけあって演奏は粗く、緩急なくひたすら激しい。それでもキッズたちにはウケているようだ。とりあえず去年のトップバッターHavenよりは、明らかに盛り上がっていた。


 16.10 Mars Volta

続いてはMars VoltaAt the Drive-Inの来日公演以来、久々のアフロライブだ。雑誌などの写真を見る限り、最近はアフロも控え気味なのかと思いきや、フタを開けてびっくり。セドリックもオマーも、過去最高の大爆発アフロ。セドリックは、第一音が鳴った瞬間から、全身を使って踊りまくっている。オーディエンス側からは、大歓声ではなく大爆笑が起こる。

ライブパフォーマンスは、
ATDI時代と変わらずエネルギッシュでファンキー。違うのはセドリックのボーカルが超ハイトーンで、くねくねダンスがラテン系になったという点。マラカス持って、腰を振りまくっている。先日不幸にも亡くなってしまったキーボードの代役を務めているのは、ガタイのでかい黒人。迫力がありすぎて、キーボードが壊れそうである。

個人的には、アルバムのような予測不可能で先が読めない妙なトリップ感を期待していたのだが、ライブは意外とシンプルだった。
Kinesisより盛り上がらなかったのが残念。

    
                          





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 17.00 Teenage Fanclub 

激しいライブが2つ続いたところで、しばしチルアウトタイム。DJ"Scottish Legend, Teenage Fanclub"と紹介すると、ステージ裾から、ノーマンが「どーも どーも。」とひょっこり登場。今に始まった話ではないが、3人とも近所のパブに飲みに来たおじさんという装いで、さっぱり冴えない。

だが歌い始めたらこの
3人の右に出るおじさんはいない。1曲目は、ジェラルドがボーカルの"Don't Look Back"。さっきまでの熱さはどこへやら、一気に会場がなごむ。続いて、ノーマンが"I Don't Want Control"、レイモンドが"About You"を美しく歌い上げる。タイミングよく太陽も出てきた。もう最高。

最前列はすでにゴスっ娘だらけだが、
1曲終わるごとに、皆惜しみない拍手を贈っている。だがその後にいちいちノーマンのオヤジギャグがとぶのが寒い。私の耳が正しければ、(強風を気にして)「カツラ飛ばないようにね」と言ったような気がするのだが。





ノーマンは、"Your Love Is"で超真剣にミニ鉄琴を叩いていたと思えば、歌い終わるときに「じゃじゃーん(Ta-da!)」と言い放ち、そして観客の「Cosmic Rough Ridersより最高!!」の叫び声には、「あったり前じゃん(Absolutelyyyyy〜)。イエーイ!」と親指を突き出す。オヤジモード炸裂で、どれもめちゃくちゃかっこ悪いのだが、この素朴さがたまらなく良い。

すっかりステージとオーディエンスが一体となったところで、お馴染み
"Sparky's Dream"。ステージ上のコーラスは完全無視でオヤジも若者もダミ声で大熱唱。続いて、"Everything Flows"、そして"The Concept"でフィニッシュ。終始ハモリ倒し、会場全体をハートフルな雰囲気に包みこむという使命(?)を果たして、彼らはステージを後にした。


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 18.05 Super Furry Animals

TFC
後、いったんスタジアムを出て腹ごしらえ。無難にポテトを食す。再びスタジアム内へ戻り、次はSuper Furry Animalsのライブだ。ウェールズ出身の彼らだが、どうやら今日は「Virgin Train(=MOVEのスポンサー)に乗って、15時間もかけてはるばる来た」らしい(byグリフ・もちろん冗談)。そんなアニマル軍団、フォークっぽい曲から、ぶっとび系パンクまで、バラエティに富んだセットで客を盛り上げる。"Rings Around The World"では、ついにキッズが大暴れ。前方でモッシュ&クラウドサーフィンが起こっている。しかしながら、終盤に入ると突如テクニカルプロブレムが起こり、最後はよくわかんないままに終わってしまった。あーあ・・・。





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 19.25 Flaming Lips

次はお待ちかねFlaming Lips。ステージには既にロボット3体がスタンバイ。司会のDJは、全オーディエンスの興奮を代弁するかのように「なんかスゴイことになりそうだ!」と叫んでいる。そして、人形軍団が続々とステージに入場。トラ、ライオン、ゴリラなどなど着ぐるみ計18人。太陽が2人(?)に、サンタクロースが1人。そしてもちろんメンバーも各々動物の姿で登場する。最後にスーツ姿のウェインが現れ、総勢25名でライブがスタート。

オープニングは、
"Race For The Prize"。心地よいポップソングで、会場全体に至福感が満ち溢れる。まさに雰囲気はウェルカム・トゥー・ヘブン。ステージのアニマル軍団はというと、曲に合わせて踊りまくっている。そのシュールでエキセントリックなフレミンワールドに、オーディエンスは完全に引き込まれる。

なんとも楽しいステージだが、現実問題としては深刻そうだ。よく見ると、アニマル軍団は皆ミネラルウォーター手にして踊っているのだ。中は相当暑いらしい。そのうちニワトリがギブアップし、顔を外して踊り出す(キレイなお姉さんだった)。続いてトラもバテ始め、顔を外しては水を飲み、なんとか耐えている様子(中身は太めの男の人だった。そりゃぁ辛いよ)。


大変なのはメンバーも同じ。ドラマーは、やってらんねぇとばかりに、着ぐるみの腕と足をまくりあげてぽりぽりかいている。本当に辛そう。(余談だが、シカの中には
MOVEフェスのオーガナイザーがいたらしい。)

アニマル軍団の苦労などお構いなしに、ウェインの奇天烈パフォーマンスは続く。
"Yoshimi Battles The Pink Robots"では、修道女の姿をしたミニチュア人形が、腹話術風にウェインの代わりに歌い出す。観客大爆笑。それでも皆、"Her name is Yoshimi, she's a black belt in karate(彼女の名前はヨシミ。空手で黒帯持ってんのさぁ〜)"と、意味不明な歌詞を大合唱。サビも一緒に"♪ヨシーメ、they don't believe me"ときた。うーん、「ヨシメ」じゃなくて「ヨシミ」なんだけどね。

続いて、今日が誕生日のオーディエンスのために、皆で
"Happy Birthday"を斉唱。もうこの頃にはウェインの顔は血(のり)まみれ、服も血だらけだ。おまけに紙吹雪やら風船やらが宙を舞い、クリケットスタジアムはすっかり別世界。最後は"Do You Realize?"の幸せな大合唱で締めくくった。しかしアニマル軍団が続々とステージを去っていく中、ウェインおじさんはというと、先程ステージに降りたときに血まみれにしてしまった女の子の頭を、一生懸命に拭いてあげていた(笑)。

Yoshimi doll

fake blood




 20.55 Manic Street Preachers

いよいよ本日のトリManicsの出番だ。ビールとフレミンの素晴らしいパフォーマンスのおかげで、オーディエンスは既にテンションが高い。そして3人がステージに登場すると、その興奮は最高潮に。割れんばかりの大歓声が起こる。

イギリスではもうお決まりなのか。なんとまたしても"
You Love Us"からキックオフだ。キッズからオヤジまで、集まった客は皆コブシを高く突き上げて「ユーッ!ラッブ!アッス!」と叫ぶ。アーミー服で登場のニッキーは、笑顔で観客に応えている。

2曲目は、"Holy Bible"から"Die In The Summertime"。続いて"Motorcycle Emptiness"、"The Masses Against The Classes"。オーディエンスは、もうただひたすら歌い狂っている。そして"Ocean Spray"、"If You Tolerate This"の大合唱の後、ジェームスが口を開く。「"ジャッジ・ドレッド"って映画、観たことある?最悪だよなあれ。こっちの曲の方が断然いいよ」と言って、"Judge Y'rself"のイントロが始まる。元々この曲は、映画「ジャッジ・ドレッド」のサントラに入る予定だったもの。近々発売予定のB-sideアルバムに収録されている曲だ。


                           ※click photo to enlarge

"Little Baby Nothing""La Tristesse Durera"の、がなりまくり大合唱の後は、Camper Van Beethovenのカバーで"Take The Skinheads Bowling"。マニックスが若い頃によく聴いていた曲だそう。近くにいたビール腹のオヤジ2人が、重々しく飛び跳ねながら熱唱している。ちなみにこの曲も、B-sideアルバムの収録曲。

続いては、ジェームスがアコギ一本で、
"Small Black Flowers That Grow In The Sky"を歌い上げる。改めて言うまでもないが、この人は本当に歌がうまい。隣りのオヤジが大声張り上げて歌ってさえいなければ、涙を流して感動しそうなほど。実はこの歌、最初にジェームスが「Daily Star(イギリスのタブロイド紙)に捧げる」と言って歌い始めていた。というのも、先日この新聞に「リッチーの骨が発見された」という記事が掲載されたからだ。もちろんそんなのウソだが、かなりご立腹の様子。

再びバンドセットに戻り、今度はガンズのカバーで"
It's So Easy"。こちらはお馴染みなので、皆余裕で大合唱。そしてB-sideの"Prologue To History""Everything Must Go""This Is Yesterday""You Stole The Sun From My Heart"と続く。クライマックスはやはり、"Design For Life"。超スーパーミラクル(笑)大合唱で、幕を閉じた。うん、最高。でも時計を見てビックリ。予定より10分も早く切り上げられたようだ。ちょこっと不満。。。


 
"You Love Us"







22.30 Curfew

終演後、足早に
Old Trafford駅へと向かう。だが大混雑しているというのに、電車がなかなか来ない。待つこと20分。ようやく電車に乗り、ダウンタウンへ戻る。ホテルに着いたのは、午前12時近くだった。明日は朝イチの電車でエジンバラに移動だ。

ちなみにこの日の
MOVEは、チケットの売れ行きが1万枚を下回っていたというウワサ。キャパの半分しか売れないなんて、ちょっと問題である。平日に開催するのが原因だと思うが、果たして来年はどうなるのだろうか・・・。


                         

 




★おまけ★

MOVEレビューが読めるサイト     

 Manchester Online
 eFestivals.co.uk
 Virtual Festivals

 


T in the Park 1日目レポートはこちら

フェスティバルレポート2003



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